ノワールは闇、1
それは一種の不運だった。偶然でもあった。
彼女は交通事故の影響で下半身に力を入れることが苦手だった。その事故以来暖かかった彼女の心はすっかり凍り付き、誰にも心を開いてくれなかった。生きることに失望し、事あるごとに自殺未遂を繰り返した。リストカット、過量服薬、やれる事は何でもやった。それでも生きることに縋りつくように病院で目を覚ます自分を彼女は自分の事なのに、心底嫌がった
彼女には旦那がいた。献身的な旦那は子供を作れない、幸せになれないとすっかり捻くれてしまった妻を見て自信を無くしていた。子供がいる事だけが幸せだと限らないのに、自分が子供が欲しいのだと言ってしまったばっかりに彼女はそれが分からない。悲しかった。もう子供なんか望まない、君が生きてさえいればいいと何度言っても彼女は子供にこだわった。そしてその自身の発言が彼女を子供を妊娠すらできないと失望させ、彼女の自殺への衝動を悪化させている気さえした
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